2015年3月6日、『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』のメインテーマを担当するBOOMBOOM SATELLITESとニンジャスレイヤー翻訳チームとの特別対談企画を実施。
※本対談は、3月3日に行ったTwitter対談から一部抜粋掲載しております。
●音楽に多大な影響を受けたという『ニンジャスレイヤー』。メインテーマに込められた思いは―
2010年からTwitter上で有志(翻訳チーム)による翻訳連載が開始されると、
徐々にその独特の言語センスとニンジャカラテアクション、サイバーパンクな世界観が話題を呼び、ついに2012年に書籍化。
その後は8エピソードのオーディオドラマ化、3誌でのコミカライズ化と破竹の勢いでメディアミックスが行われてきた本作だが、2015年4月からついにアニメ配信がスタート。
そこで今回はニンジャスレイヤー翻訳チームとアニメのメインテーマを務めるBOOM BOOM SATELLITESの特別対談企画を実施。
こちらは先日、突如翻訳チームからのリプライで始まった即席Twitter対談の延長戦で、
そこで語られたメインテーマ「BACK IN BLACK」の楽曲制作の裏側や歌詞に込めた思いなども再掲載。
リアルタイムで彼らのやり取りを見逃した方も是非ご覧ください。
■作品作りの本質とは―
※Twitter対談から抜粋
翻訳チーム(以下、翻訳) ドーモ。先日は(楽曲提供)ありがとうございました。「BACK IN BLACK」聴いております。
ブンブンサテライツ(以下、BBS) 先日のブンブンサテライツニコ生でのコメントありがとうございました。
アニメ『ニンジャスレイヤー』のメインテーマ曲へのオファー、大変光栄に思ってます。
翻訳 バッチリと世界観に合っていて、原作者も当然ながら、我々もうれしかったです。
『ニンジャスレイヤー』のためだけの歌詞ではないと思うのですが、ところどころに作品を匂わせるようなフレーズが入ってきていて、
全体的に、サイバーパンクらしい……自我が拡散、凝縮していくような……そんなものを感じて、『ニンジャスレイヤー』らしいな、と思いました。
BBS 今回、歌詞は自分(川島)が書きました。
書籍版の小説と漫画を読んだ上で書いたのですが、普段自分が考えている通り曲に寄せた歌詞にしようと思って臨みました。
聴いて喜んでいただければうれしいですね。
翻訳 楽曲についてはどのような形で制作されたのですか?
BBS アルバム制作期間があまりに長かったので…実はよく覚えていないんです(苦笑)。
翻訳 ギターがとても強く感じましたが、あのリフが最初に来た感じですか?
BBS そう……だったと思います。どのタイミングで歌が来て、だとかよく覚えていないんですよね。
でもベーシックな部分は一晩くらいで書き上げたと思います。
その後ダビングしたり、長くかかる作業はあったのですが、最初は勢いでバーッと作ってしまいました。
翻訳 なるほど、勢いがあるわけですね。原作者2人も、イントロから強いカラテを感じられ、とても気に入っていると言っていました。
それとアルバム(「SHINE LIKE A BILLION SUNS」)を通して聴いてみると、「BACK IN BLACK」だけ、なんというか、少し異質な感じも受けました。
BBS 確かに、アルバムの中ではあの辺からフェイズが変わっていく、「BACK IN BLACK」がその転換部分となっている曲かも知れません。
翻訳 全体のサウンド傾向が既存のアルバム群とはかなり違っていますが、それでいて矛盾が無く、これまでの蓄積・文脈をしっかり感じることもできます。
解放感のある、前向きな曲が多いですよね。
BBS 僕らもデビューして18年なので、少しは大人になったんじゃないでしょうか?(笑)。
でも冗談抜きで、デビュー当時からブレないものもありますが、成長していかなくちゃ、という気持ちはあったので。
例えば、EDMが流行ったらそれをやればある程度は売れる、みたいなところは計算できると思うのですが、
それだと自らのアイデンティティを持っていないことになると思うんです。
自分たちが時代とどう向き合っていくか、付き合っていくかと考えていかなくてはならないと思っていて、
「BACK IN BLACK」は世間を断って、自分たちの音楽を作ろう、という気持ちで作りました。
翻訳 あくまで自身の本質を見つめ……という事ですね。
ジツに頼らず己の生身のカラテで状況を打破するニンジャスレイヤーのイズムと同質のものを、今、感じました。
ヘッズ達も想像力を働かせて楽曲の意味を考えたりしており、「BACK IN BLACK」は実際、アニメに限らず『ニンジャスレイヤー』にピッタリな曲だな、と思います。
■書籍、コミカライズ、アニメ…イメージの統一化を避ける
中野雅之(以下、中野) 本作の日本の読者の年齢層はどれくらいですか?
本兌有(以下、本兌) 20~30代が多く、こういったジャンルの小説には珍しく男女比が約1:1くらいなんです。
男達の殺し合いの物語なので、そこに思い入れを持っていただける女性が結構いらっしゃるようです。
SFというジャンル自体は昔に比べるととっつきやすい感じになりましたよね。
SFからの影響は、ブンブンサテライツさんの音楽にはあるのですか?
中野 僕らはガンダム世代なので、「ガンダム=SF」という捉え方は苦しいところがありますが、あのメカデザインがスタートになっているものも多いんじゃないかと思います。
昔からSF作品に触れてきましたが、その中でウィリアム・ギブスンの作品が一番エッジが効いているな、と思いました。
本兌 ウィリアム・ギブスンは、僕らも非常に好きですね。
杉ライカ(以下、杉) ニューロマンサーの翻訳版は独特すぎて、最初は物凄く読みにくかったですね、2回読み直してようやく意味が分かるという。
本兌 でも慣れるとあの文体って、読んだそばから頭の中に映像が浮かんでくるようになるんですよね。
杉 非常に視覚的な文体だと思ってます。ギブスンの時代先取り感にふさわしい翻訳だったなと。
中野 インターネットが普及する以前にサイバースペースの概念が出てきたり。
僕がSF作品を読む際に面白いと感じるのは「人がどこへ向かうのか、進化しているのか? 未来に何が待っているのか?」を描いているところだと思うんです。
その中でヒューマンドラマがあったり、人類そのものを描いていたり。
真新しいガジェットが出てくるのももちろん魅力だと思いますが、自分にとっては、それ以上にそこが魅力です。
本兌 ブンブンサテライツさんの曲を聴いていると、
ロックンロールとダンスミュージックのデジタルなイメージなど、肉体的な部分とデジタルな部分が融合する、
どこかサイバーパンクを髣髴とさせるな、というのを感じるんですよね。
中野 昔『ニューロマンサー』の中のクラブの1シーンで「ビートのある音楽」という表現があったのですが、当然本なので音楽は流れていないんです。
ですが、そこで「未来の音楽が流れているんだろうな」と色々想像しました。
その後、様々なサイバーパンク作品がハリウッドで実写化されて、音楽が自分のイメージしたものと全然違っていて……ということがあったのですが、
今回アニメ化されるにあたって、キャラクターの動き方や描かれ方は気になりますか?
杉 映像作品になったときに原作のイメージと違う、という懸念は、世のメディアミックス展開にはつきものですよね。
ニンジャスレイヤーの場合、原作者が逆にビジュアルイメージの多様性にこだわっているのも、そのような理由からだと思います。
例えば、小説が映像化されると、それが唯一の正しいイメージだと思われがちですが、ニンジャスレイヤーの場合、全くそうではないというスタンスです。
コミカライズも、公式小説の挿絵ですら、あくまで多様性のひとつと捉えてほしいと。固定したくない、という事ですね。
本兌 アニメにせよコミックにせよ映画にせよ、原作小説以外のものは、原作の代替物には決してなりえない、とボンド氏は言っています。
メディアミックス作品は派生物なので、ニンジャスレイヤーを真に理解するには、必ずそれらのものから原作に向かって行く必要はある。
ならば、むしろ、各メディアミックス作品ではそれぞれのメディアの特性をとことん活かして、最適化してもらったほうが逆にいいと。
原作を薄めたり噛み砕いたりしたものを出すのではなく、どんどん攻めて、その結果、それぞれのメディアミックスと原作がお互いを照らしあうようなものが理想だという事です。
杉 まず、ニンジャヘッズ全員の要望通りに作る事は物理的に現実的ではない。
各方面の顔色をうかがって、結果、「原作をいかに安全になぞったか」の確認作業のような作品にしてしまうのは我々らしくない。
だったら常に尖ったクレイジーなものをやろう、僕らのやりたい事をやろう、というのが原作者と翻訳チームに共通するスタンスです。
本兌 今回いくつもの選択肢の中からTRIGGERさんを選んだわけですが……
たとえば「リアルなデザインであまり動かないニンジャスレイヤー」と「独自のデザインでとても動くTRIGGERのニンジャスレイヤー」どちらがいいですか、と。
原作者からのレスポンスは単純明快で「TRIGGERに決まっている」「リアルなのはハリウッド実写でやればいいだろう! アニメなんだからアニメでしかできない事をやるんだ!」という答えでした(笑)。
中野 TRIGGERさんとの打ち合わせは頻繁にしてるんですか?
杉 はい。雨宮監督は普段は寡黙な方なのですが、アニメへの執念がすごいですね。
中野 現在、アニメのトレーラーとキービジュアルが公開されていますが、この後もどうなるか想像がつかないですね。
本兌 実際アニメが始まっても次回の想像がつかないくらい、凄い作品になると期待してます。TRIGGERさんならば、やってくれるでしょう!
■「人がどこへ向かっていくのか?」という普遍的なテーマ
杉 お二人はテクノロジーに対してどのようなスタンスをお持ちですか?
中野 僕たちは全然アナログですよ。
例えばライブで「最新技術を使ってこんなことができますよ」と提案してくださる人がいるのですが、
最終的にエンターテイメントにならないのならローテクのほうがいい、と思ってしまうクチなんです。
ただ技術だけが新しい、というだけでは芸術ではなく、中身が重要だと思うんですね。
ちなみに、アルバムについて自分の言葉で伝えたい、と思い、昨年ようやくTwitterを始めました。
そしたらフォロワーから「今さら始めたんですか?」とお言葉をいただきまして。
「Twitter最終電車に乗っかります」ということで(笑)。
杉 物凄く意外で面白いですね。音作りにおいて未来的な部分が入ってくることがあると思いますが、その時はどのように臨むんですか?
中野 「人がどこへ向かっていくのか?」というのは普遍的なテーマだと思うんです。
『ザ・ムーン』(2009)という、ロケットを飛ばして月へ行くというアメリカのドキュメント映画が好きなのですが、
志にすごく胸をうたれますし、SF自体がすでに科学ではないのかも知れませんが、そういうリアリティは音楽を作る上でも大事にしていきたいと思っています。
杉 『ニンジャスレイヤー』もサイバーパンクの一種なので、当然人間の自我とは何かといった普遍的なテーマを扱った話が出てくるんですが、だいたいカラテです。
テクノロジーが過剰発達している世界で、主人公だけは一切オーバーテクノロジーを使わない。
ガチガチに武装している敵や冷徹なUNIXシステムをカラテだけで倒していく、という痛快さがあります。
本兌 アナログなんですよね。普通はクローンとかサイボーグとかハッカーが主人公なんですけど、ニンジャスレイヤーの場合は主人公にそういうテクノロジー要素がない……。
人の定義を記憶に求めるサイバーパンク作品は多いんですが、あくまでもアクションに重きを置いています。
むろん志ありき、でも重要なのはアクションと結果。その辺りのバランス感がこの作品の面白さかなと思います。
―最後に、記事を読んでいる皆さんへのメッセージ
中野 アニメがスタートするのが今から本当に楽しみですね。僕らの曲が作品に少しでも貢献できていれば幸いです。
本兌 ここまでシンプルかつ骨太なアクション・ストーリーというのは昨今逆に珍しいと思うので、どんな年齢層の方にも、ヴィヴィッドに楽しめるのではないかと思います。
アニメに関しては、まだまだ言えない情報もたくさんありますが、続報を楽しみにしていてください!
杉 『ニンジャスレイヤー』は、映画や音楽にすごく影響を受けている作品で、翻訳チームである我々ももちろんそうです。
その『ニンジャスレイヤー』を読んで作られた『BACK IN BLACK』を聴いた人が、いつか新たな小説を生み出したり、さらにそこから何か新たな音楽や映像が生まれたり……
そういう連鎖が生まれればとてもうれしいですね。
BOOM BOOM SATELLITES 1997年ヨーロッパでデビューし、ブレイクした中野雅之、川島道行からなるロックバンド。 エレクトロニックとロックの要素を取り入れながら 新しい未知の音楽を創造し続ける日本屈指のクリエイター。 これまでも映像作品への楽曲提供を勢力的に行い、 デビューから現在に至るまでアーティスト、クリエイターからの絶大なる支持を受けている。 現在ニューアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」発売中。 【BOOM BOOM SATELLITES公式HP】 http://www.bbs-net.com/ |
▲ニューアルバム「SHINE LIKE A BILLION SUNS」 初回盤;SRCL8688~9 ¥3,500+税 通常盤;SRCL8690 ¥3,000+税 |
ニンジャスレイヤー翻訳チーム
『ニンジャスレイヤー』原作者のブラッドレー・ボンド氏、フィリップ・N・モーゼズ氏から、
日本における全ての権利を取得し、Twitter上で翻訳連載している謎に包まれた集団。
こちらは彼らのTwitterアイコンでニンジャの脅威にさらされないよう写真掲載は許可していない。
本対談には本兌有氏、杉ライカ氏が参加している。